1.国内調査部会の活動

 国内調査部会では、各自治体の教育委員会や学校現場における「教育の情報化」の諸条件に係わるICT環境(ハードウェア、ソフトウェア、ネットワーク、サポート体制、予算、情報セキュリティ、情報化の意識等)の実態について、大規模な「教育用コンピュータ等に関するアンケート調査」を隔年で継続的に実施している。この調査で収集・分析したデータは学校における教育の情報化の実態と進展状況を知るとともに教育委員会等で具体的な整備計画や対応策を立案するために役立てる資料として貴重なデータとなっており、文部科学省や総務省の資料にもこの調査のデータが引用されている。
 令和3年度は、第13回教育用コンピュータ等に関するアンケート調査(以下、第13回アンケート調査)を実施し、分析を行った。今回は、GIGAスクール構想での整備が進んだ後での初の調査で、1人1台コンピュータが整備され学校現場のICT環境が大きく変化した直後の状況を把握する貴重なデータとなるものと考える。
 部会活動は主にJAPET&CECの会議室で行っているが、今年度もコロナ禍で、リアルとリモートのハイブリットで行った。例年、年に2度の合宿を開催しているが、令和3年度は2年度に続いて見送ることとなった。

2.アンケート調査概要

(1)調査の目的
 本調査は、以下の3つを目的としている。

  1. 教育の情報化に関わる企業・団体の集まりであるJAPET&CECの特色を生かし、現場目線での教育委員会・学校における教育の情報化の実態や意識を把握すること。
  2. 調査結果を国や自治体への政策提案に反映するとともに、教育の情報化の進展に向けた提言として活用すること。
  3. ICT環境整備に関する教育委員会の予算実施状況等を調査することで、JAPET&CECの会員企業の教育ビジネスに役立つ情報を収集し提供すること。

(2)調査対象および調査方法
 全国すべての市区町村の教育委員会及び一定規模の児童・生徒数を有する範囲の学校からランダムに抽出した公立小中学校を対象にアンケート調査を行っている。学校は1学年が複数の学級から構成されるような規模の学校を想定した調査となっており、複式学級となるような小規模校や1学年の児童・生徒数があまりにも大きい学校についても、調査対象としてはやや特殊な状況にあることが推察される点や、回収結果が平均的な学校規模から大きく変わってしまう可能性を考慮し、対象から外すこととしている。また、ICT環境整備が特に進んでいると思われる、ほぼ児童生徒1人1台のコンピュータ整備をGIGAスクール構想以前に実現していた自治体(先進地域)を抽出し、その自治体の小中学校にアンケート調査を依頼した。今回の調査では、小学校については児童数が80以上800未満、中学校については生徒数140以上700未満を対象とし、結果としては、小学校3,691校、中学校1,559校の合計5,250校を抽出しアンケートを依頼した。
第13回アンケート調査では、案内を郵送し、Googleフォームで回答いただいた。働き方改革で外部からの調査が難しい中、多数の回答を得られた(表1)。教育委員会、学校現場の方々のご協力に感謝いたします。

表1 調査対象及び回答状況の推移

(3)調査項目および項目数
 調査項目は以下の通り。

 a)ICT環境整備状況・活用状況 ネットワークに関する項目
 b)ICT環境整備状況・活用状況 ハードウェアに関する項目
 c)ICT環境整備状況・活用状況 ソフトウェアに関する項目
 d)保守サポートに関する項目
 e)予算に関する項目(教育委員会のみ)
 f)セキュリティに関する項目(教育委員会のみ)
 g)教育の情報化に対する意識に関する項目
 h)学習記録に関する項目(学校のみ)

3.第13回アンケート調査結果に関して

(1)ハードウェア関して
第13回アンケート調査は、GIGAスクール実施前の児童生徒用コンピュータの整備状況が確認できる。

グラフ1.小学校の児童が使用するアカウント

  文部科学省の調査でもGIGAスクール端末の3分の1程度はiOSであるが、アカウントはWindowsやGoogleのアカウントを採用するところが多くなっている。(グラフ1)
 GIGAスクール端末と同時に整備したものを見ると(グラフ2)、保守サポートは全体で5割に達しておらず今後の運用に不安がある。

グラフ2.中学校でGIGAスクール端末と同時に整備されたもの

(2)ソフトウェアに関して
 教材となるソフトウェアに関しては、今回のGIGAスクールの対象となっていない。1人1台コンピュータの環境で、コンピュータを有効活用するためにはそれなりのソフトウェア(アプリ)が必要だと考える。

グラフ3 小学校高学年で導入されている学習者用デジタル教科書

 グラフ3を見ると、教科では算数が多いが、自治体規模により大きな差が出ており、政令市等での整備が進んでいる。中学校で生徒が授業で使用するソフトウェア・コンテンツは、Web・クラウドで提供される有償コンテンツが最も多いが、端末1台ごとにインストールして使用するコンテンツが全体で3割強もある。(グラフ4)GIGAスクール端末の台数を考えると導入業者や学校現場の負担が懸念される。

グラフ4.中学校で生徒が授業で使用するソフトウェア・コンテンツ

(3)ネットワークに関して
 GIGAスクールで、これまでにない台数のコンピュータが学校に導入され、無線LAN環境も整備されたが、十分満足できる状況であるかは不明である。
無線LAN構築時に、十分な設計・現地サーベイを行ったかという設問で、「十分に行った」「満足できるレベルで行った」は、合わせて全体で8割となっている。(グラフ4)

グラフ4 無線LANは十分に設計および現地調査(現地サーベイ)を行ったか

 しかしながら、学校現場にネットワークについて感じていることを聞くと、校内で繋がりにくい場所・時間があるが6割を超えており現地サーベイが十分とは言えない状況である。(グラフ5)

グラフ5.ネットワークについて感じていること(学校)

(4)ICT環境整備での意識
  第13回アンケート調査では、ほぼ1人1台環境をGIGAスクール構想以前に実現している自治体の学校を先進地域とし、一般地域と比較している。「教員の意識が変わり、積極的にICT機器を使うようになった」という設問で、先進地域は半数近くが「強くそう思う」と回答している。「そう思う」と合わせると90%を超える結果となった。(グラフ5)
今回はGIGAスクールで1人1台環境が実現した直後なので、次回の調査で、一般地域の学校がこのグラフの先進地域の数値のようになっているか確認したい。

グラフ5.教員の意識が変わり、積極的にICT機器を使うようになった

4.部会の活動実績

次のとおり部会を開催した。開催場所は、原則JAPET&CEC会議室であるが、コロナ禍のため、リモートとリアルのハイブリッドで実施した。

表2 部会開催日及び出席人数実績